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そんな日常が一年近く続いて、そこで学んだ教訓。 「人のものは取ってはいけません」 少なくとも、うちの家族は人のものを欲しがった女のために、幸せを奪われ、ぐちゃぐちゃにされた。 結局、火遊びが大火事になった親父は、不倫が会社にもバレて、親、親戚にもバレて、各方面から槍玉(やりだま)にあげられた。 別れ話や慰謝料、母親の自殺発言。 しばらくもめはしたけれど、とりあえず相手の女が会社を辞めて、田舎の実家に帰ったことで問題は決着した。 だけど、今でも親父と母親は、何かの拍子にぎこちなくなって、家族の団欒(だんらん)であるはずの時間に、冷たい空気が流れることがよくある。 そんな時、一人っ子である俺に発言の自由はなくて、嵐が過ぎるのを身を小さくして待つしかないんだ。 だから、俺は不倫するヤツなんてキライだ。 アイツらは自分のことばっかで、自分が楽しけりゃそれでよくて。 その影で泣いたり傷付いたりしてる人間がいることを想像もできない馬鹿ばっかだ。
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