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『今夜、もう一度、会って話がしたいの』
大崎美穂からの電話だった。
久しぶりの元彼女からの電話。
羽嶋彰弘は6ヶ月前、美穂に別れを切り出していた。
その直後、返事も話し合いもせず突然行方をくらました大崎美穂から電話があったのだ。
二人行き付けの喫茶店で、彰弘が別れを切り出した途端、血相を変えた美穂が席を立ち、そのまま音信不通になっていた。
美穂の電話に彰弘は二つ返事で応じた。
美穂は彰弘と七年間付き合った相手だった。
尻切れトンボの状態だった美穂との関係。
最後に会ってから六カ月という時間が経っていたが、彰弘はもう一度、話をしておきたかった。
ちゃんと美穂との終止符を打って置きたかったのだ。
彰弘が美穂に別れを切り出したのは、自分に結婚の話が来ていたからだ。
代々続く医者の息子でもあった彰弘に、父の知り合いの医者の娘でもある佐橋樹里との結婚話が舞い込んできた。
恋人がいると即、断ることも出来たが、今年で三十三歳を迎える彰弘は早く結婚をして落ち着きたかったのだ。
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