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「お電話代わりました……」
パイプベッドのふちに座り受話器に耳を傾けた。
「もしもし……もしもし……」
返事が帰ってくる気配がない。
(多分……間違ってないと思うけど)
「もしかして松本さん?」
凄くか細い声で“はい”と返ってきた。
(……スゲーちいせー……)
「ごめん、待たせて。んで何?」
「……」
やっぱり返ってこない。
何回も聞きなおすのが面倒で子機を耳に当てたままベッド横の窓を開ける。
風と共に車の走り去る音が聞こえてくる。
何故か受話器からも車の音が聞こえてきた。
「松本さん、今どこにいるん?」
少し間が空き、さっきより小さい声で答えた。
「戸高くんちの前に……います……」
「はあ!?マジで!」
スプリングも入ってないパイプベッドから跳ねるように飛び降りた。
「何で?!」
「…………」
(あーあ、まどろっこしい!)
「出るからちょい待って」
彼女はわかったと言って携帯を切った。
それにしてもどんどん小さくなってく声、僕が出ていったらどうなる事やら。
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