9人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは……
どこだろう……妙にリアルな感じがする。
さっきまで汽車に乗ってたはずじゃ……でもここは並木通り。
見覚えのない交差点、後ろから子どもの笑い声が聞こえる場所。
柔らかな日差しがあたる。
木々の立ち並ぶ見通しの良さそうな通りを歩く僕は横断歩道の前で立ち止まる。
寒さと暖かさの入り交じった風が頬を撫でる。
信号が変わるのを待つ僕。
誰かが僕を呼ぶ。
振り返る僕。
(なんか、苦しい……)
見知らぬ女性が手を振りながら歩いてくる。
(嫌だ、やめてくれ。嫌だ、見たくない。)
あと20メートル程……少しずつ彼女との距離が縮まる。
優しい日差しが雲で遮られ、辺りが少し暗くなった瞬間……
鈍い“ドン!”という音と甲高いブレーキの音とが辺りを支配した。
横たわる女性から流れ出る赤い鮮血はアスファルトを染め、車を止め駆け寄る男性や人々。
(動け、動け、動くんだ!駆け寄るんだよ、彼女を助けなきゃ!)
目の前が真っ白になってすぐ真黒になった……
最初のコメントを投稿しよう!