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そんな体を起してみるとかび臭いベージュ色の薄い毛布がかけられ、ここまで見れば自分がどれ程の醜態をさらしているのか一目瞭然だった。
「わりぃ、亜矢子。来てくれて、助かったよ。で、ここは?」
鼻の奥の痛みがツーンと残り、少し頭もいたい。
サッシ窓が一つに小さな押入れのある四畳半一間、入口は木製の引き戸、どう見ても汽車や駅内じゃない。
「ここは駅隣にある駅員専用の仮眠部屋だそうです」
突然の声に僕は動揺した。
てっきり亜矢子と二人きりだと思っていたので、声の主の気配すら感じていなかったからあわててあたりを見渡す。
「今は殆ど使ってないそうですから、埃っぽいですけど、休むのには丁度いいでしょう」
どうやら亜矢子の影になっていた声の主はまさしくあのダンス少年。
“ヤツ”は壁にもたれかかって片膝を立てて座っている。
「ちょっと、ちゃんとお礼言いなさいよ、潤平。この人があんたに付き添っててくれたんだから!」
「マジで?!」
亜矢子は小さく頭を縦にふった。
(意識が遠退くとき駆け寄った人は別のひとだったようなぁ……)
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