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中年の駅員さんが心配そうに声をかけてきた。
「君、もう起きて大丈夫? 親御さんに連絡を取ろうしたんだけど……」
慌てて“それはいいです”と口にしようとした僕の言葉を遮るように駅員さんは続けた。
「その子が電話で自分が来るからいいといってね。
連絡してないけど、本当にいいかのい?」
といいながら駅員さんは窺うように僕の顔を覗き込む。
(よかったぁ)
結構長年この現象に苦労させられているけど、それは両親にとっても同じことだった。
この“力”のことを両親も知っている。
けど、今は小さかった頃より落ち着いていると思い込んでいる両親にまだこんなことが続いていると知られたら……実は知っているんだ、母さんがこっそり僕のことで泣いていたことを。
ハァっと声に出しそうな位のため息を誰にも気付かれないように飲み込んだ。
一難は避けられたようだった。
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