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バシッンと容赦無い亜矢子の平手打ちが背中に入る。
あまりに勢いが良すぎて息が詰まる。
「ほら! かたして帰るわよ!」
背中が痛い。
たぶん今頃鮮やかな大きな紅葉ができているだろう。
お陰で何考えていたのか忘れてしまったじゃないか!?と亜矢子に投げつける。
痛みに耐えながら綿毛布と座布団を折り重ねる。
(あれ?そういえば あいつ“私”って言ってなかったか?)
今ごろになって違和感に気付く僕は頭を掻きながら小屋を後にした。
僕の寝ていた所は出てみると意外に駅のすぐ横で、錆びた汚いモスグリーン色のフェンスを挟んですぐに乗り場がみえる。
陽も傾き、帰りの汽車を待つために駅のホームへ向かう僕ら。
駅の周りに植えられた桜がまばらに咲き、風に揺れる。
(あっ!あいつ……)
下りのホームでで駅員さんとが話している。
“ヤツ”が頭を下げ、駅員さんは笑顔で会釈し、ばらけた。
普通だったら気にならないはずの光景なのにみょうに印象的できになる。
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