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僕は定期を見せて駅のホームに入った。
まだ冬の寒さの入り交じる風が僕らの頬をなでる。
「桜、きれい、入学式が一番かな、潤平」
隣でさくらを眺めながら亜矢子が笑う。
駅構内にある桜は小さいうえ虫食いの痕がえぐれているくせに花は盛りのように咲かせていて。
「桜ねぇ……」
僕にはなんだかとても痛々しくみえる。
『特急列車が通過します、白線の内側までお下がりください』
なんでだろう……構内で繰り返されるアナウンスや亜矢子の声より向かいのホームで電車を待つ“ヤツ”が気になってたまらない。
(なんか……起こりそう……何かが)
なんだか胸の辺りが弾む感じがする。
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