3、近くて遠い

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「これ飲んで、もう帰ってくんねぇかな」 冷水をガリ勉男の前に差し出して、永田さんは冷たくに言った。 「今夜は本当にすまん」 後藤さんは、本当に申し訳なさそうに言う。 「後藤。しばらくは、連れ合いは無しで来い」 「すまん…」 ハッキリと言い切った永田さん。 あの、さりげない感じが好き。 すると、 「客に対して無礼な店主だな」 ガリ勉男が、ボソッと言うから。 永田さんはピタリと立ち止まる。 …やばい空気が流れた。 「悪いが俺は店主じゃないんでねぇ。はっきり言わしてもらうけど、さっさと水でもかぶってなぁ、頭冷やして帰れや」 怖いーっ! 私も後藤さんも、一瞬の重い空気に緊迫した。 泥酔いしたガリ勉男は、立ち上がったついでにグラスの水を溢してしまい、私はとっさにハンカチを出して拭いた。 その日はもう、永田さんは不機嫌の絶頂で露骨な態度。 あまりに鬼のような怖い顔に、私は声も掛けれずに、帰って行った。
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