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「えぇっ!」
私は今、女将さんから、とてつもない言葉を聞いた。
「嫌ですよ、あんな永田さんと二人で店の切り盛りだなんて…」
私は深く溜め息を付いて、言う。
「大将が検査入院から戻ってくるまでの、ほんの一週間でいいから。二人で頑張って欲しいのよ」
「私が避けてる事、知ってる癖にひどい」
「お願いします」
そんな、両手で拝まれても、困る。
女将さんってば、調子いいんだから。
お願いしてる割には、ニヤついてるのが丸わかり。
仕組まれてないかって、思っちゃう。
「何が嫌だ。俺だって、おまえみたいな女と店の切り盛りだなんて、ごめんだ」
早速、現れた。
相変わらず、口が悪い。
いちいち、喧嘩売るような言葉を吐いてくるんだから。
ムカついてるんなら、せめて無視しろよって。
「全く、二人とも。素直じゃないねぇ」
女将さんの言葉に、私と永田さんは言葉が重なった。
「どこが!」
「どこが!」
「つくづく仲が良いんだから」
永田さんと二人きりだなんて、嫌に決まってる。
今だって、意識すると手元が狂っちゃうのに。
だから、必死で見ないように、嫌いなふりして、働いている。
本当は永田さんの事、好きなんだもん。
「で、いつからな訳?」
永田さんは、偉そうに腕組みをして、眉を八の字にして女将さんに訪ねた。
「今夜から」
「今夜のネタは届いてるの?明日のネタは?」
「大将が三日ばかり、問屋さんに仕入れは手配してあるから、一先ず三日間は心配無用」
「四日目からは、俺がやれって?」
「そういう事」
「分かった」
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