4、すれ違う心

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翌日には、永田さんの機嫌は戻っていて、 「なぁ、敏子」 「何?永田さん」 気軽に、名前で何度も呼び合っちゃって。 「こっち来て。ほれ、あ~んしてみ?」 と、言われて、 「あ~ん」 と、マグロの煮付けを何個も口の中に押し込まれる。 「どうだ?」 「…!」 喋れないし! 私は恥ずかしくて赤面。 「美味しいか?」 私は何度も頭を縦に振る。 美味しいって言うに、決まってんじゃん。 永田さんの作る煮魚の味も、焼き魚の焼き具合も、大将の指導をきちんと受けてきたからなんでしょ? 真っ直ぐに、素直に…。 この店の「みどり」の色を守り継いでいる。 この瞳がなくなるくらい、くしゃっとした笑顔のあなたも好き。 真面目で、熱心で…。 「いつまで、食ってんだよ」 私の頭をコツいて、いつまでも笑う。 私なんかで、こんなに笑ってくれるのが、私は嬉しくて溜まらない。 「永田さんが、あんなに入れるからだよぉ」 コツかれた手をどけた。 すると、どけたその手を永田さんが掴む。 えっ、あの…。 また、静かに少しの間が空く。 「おまえってさ…」 …何? それを遮るように、店の電話が鳴る。 「いや、何でもねぇ」 そう言って、私の横を通り過ぎて行った。 今、私を見て何を言いかけたのだろう。
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