5、祭りの日

2/7
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
明日は、この地区のお祭りがある。 地区会長さん、商店街の会長さん、他に祭りに関わる役員たちが、今夜はうちの寿司屋で、前夜祭として貸し切りで集まり、酒を交わす。 今夜は、女将さんもいる。 「大将はいつから復帰すんの?」 「明日の夜から」 「そら、祭りの夜だなんて、重ね重ねめでたいねぇ」 ビールを注いで、女将さんは嬉しそうに頭を下げる。 「みなさんには、ご心配お掛け致しました」 「いやいや、この若い二人に感謝しなきゃ。で、永田の縁談話はどうなったんだい?聞いてるよ、洋品店のオヤジから」 えぇっ!?もう、話回ってるの? 嫌だ!もぉ!本当に嫌! 「あの、お喋りが…」 女将さんは、私たち二人の顔を何度も見る。 この真っ青な私の顔を。 ふてくされる永田さんの顔を。 「えらく相手さんが、気に入って下さったみたいで」 「その話は、今は止めてください」 何かもう、泣きたい気分。 身体が震えちゃう。 「祭りの夜に二人で会う約束してんだろ?」 うそ…っ! いつの間に、そんな約束してるの? 頭の中が大混乱してきちゃう。 やだよ…、永田さんが他の誰かのものになっちゃうなんて。 胸くそ悪いのは、私の方じゃない。 「ってか、マジにもうその話は止めてくれって!」 永田さんは、少し声をあがらえて言った。 ガシャーーン!!… それと同時に、もう半べその私は、おぼんごと落としてビール瓶を割ってしまった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!