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明日は、この地区のお祭りがある。
地区会長さん、商店街の会長さん、他に祭りに関わる役員たちが、今夜はうちの寿司屋で、前夜祭として貸し切りで集まり、酒を交わす。
今夜は、女将さんもいる。
「大将はいつから復帰すんの?」
「明日の夜から」
「そら、祭りの夜だなんて、重ね重ねめでたいねぇ」
ビールを注いで、女将さんは嬉しそうに頭を下げる。
「みなさんには、ご心配お掛け致しました」
「いやいや、この若い二人に感謝しなきゃ。で、永田の縁談話はどうなったんだい?聞いてるよ、洋品店のオヤジから」
えぇっ!?もう、話回ってるの?
嫌だ!もぉ!本当に嫌!
「あの、お喋りが…」
女将さんは、私たち二人の顔を何度も見る。
この真っ青な私の顔を。
ふてくされる永田さんの顔を。
「えらく相手さんが、気に入って下さったみたいで」
「その話は、今は止めてください」
何かもう、泣きたい気分。
身体が震えちゃう。
「祭りの夜に二人で会う約束してんだろ?」
うそ…っ!
いつの間に、そんな約束してるの?
頭の中が大混乱してきちゃう。
やだよ…、永田さんが他の誰かのものになっちゃうなんて。
胸くそ悪いのは、私の方じゃない。
「ってか、マジにもうその話は止めてくれって!」
永田さんは、少し声をあがらえて言った。
ガシャーーン!!…
それと同時に、もう半べその私は、おぼんごと落としてビール瓶を割ってしまった。
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