1、突然の出来事

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「おい、突っ立ってねぇで、さっさと三番さんの熱燗取っ替えろよ。ったく、気が利かねぇんだから」 何だ、こいつ。 偉そうに指図すんじゃねぇ。 大将いないと、こいつ威張るから嫌だ。 いじめだよ、いじめ。 「はい、今すぐ」 バーカ! 私は慌てて、新しい熱燗を用意する。 「後は、おまえも女の子さへ出来れば、もうちょっと落ち着くと思うんだけど。そこら辺りはどうなんだい?」 オヤジさん、良い質問する。 私は聞き耳を立てる。 あっ、でもあっさり彼女いる、とか言われたらショックなんだけどな。 「はぐらかしで、もう一貫どうぞ」 「おぉっ、これまた交わし方が偉く大人じゃねぇかい」 で、彼女とか好きな女はいるのかな。 更に私の耳がピクピクする。 「いないって、言ったら紹介してくるんでしょ?」 「当たりめぇだ」 「じゃあ、いるって答えにしときますよ」 いるのかよー! 彼女いるのかよー! 私は、その弾みで熱燗を溢した。 「熱っ!」 女将さんが、そっと濡れタオルを渡して、小声で言った。 「動揺しちゃった?」 うっ!バレてる…。 「そんな事ないです」 私は恥ずかしくて俯いた。
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