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「おい、突っ立ってねぇで、さっさと三番さんの熱燗取っ替えろよ。ったく、気が利かねぇんだから」
何だ、こいつ。
偉そうに指図すんじゃねぇ。
大将いないと、こいつ威張るから嫌だ。
いじめだよ、いじめ。
「はい、今すぐ」
バーカ!
私は慌てて、新しい熱燗を用意する。
「後は、おまえも女の子さへ出来れば、もうちょっと落ち着くと思うんだけど。そこら辺りはどうなんだい?」
オヤジさん、良い質問する。
私は聞き耳を立てる。
あっ、でもあっさり彼女いる、とか言われたらショックなんだけどな。
「はぐらかしで、もう一貫どうぞ」
「おぉっ、これまた交わし方が偉く大人じゃねぇかい」
で、彼女とか好きな女はいるのかな。
更に私の耳がピクピクする。
「いないって、言ったら紹介してくるんでしょ?」
「当たりめぇだ」
「じゃあ、いるって答えにしときますよ」
いるのかよー!
彼女いるのかよー!
私は、その弾みで熱燗を溢した。
「熱っ!」
女将さんが、そっと濡れタオルを渡して、小声で言った。
「動揺しちゃった?」
うっ!バレてる…。
「そんな事ないです」
私は恥ずかしくて俯いた。
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