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私がここで、働きたいと思ったのは、紛れもなく永田さんが、ここでお寿司を握って居たからなのだ。
まだ働く前に一度、助けてもらった事があって。
商店街の入り口付近で、私は道を訪ねられた。
でも、うまく説明できなかったら、たまたまシルバーの単車で横切った永田さんが、わざわざ降りて、上手に丁寧に私の代わりに道案内をしてくれて。
私がお礼をすると、こう言ったの。
「俺、そこの寿司屋で働いててさ。この辺、よく知ってっから」
その一瞬の出会いで、私は彼を好きになった。
どこの寿司屋だと思ったら「寿司処 みどり」。
数ヵ月すると、求人の張り紙がしてあって。
私は、その時に働いていたアルバイトを辞めて、「寿司処 みどり」でフルで働く事を決めた。
だから、こうやって一緒の空間で働ける事が、本当のとこ私にとってどれだけ幸せな事か。
あぁやって、常連客のお客さん達が永田さんを冷やかしながら、色々な出来事を私の代わりに訪ねてくれるから。
私は何もしなくても、彼の情報が聞けるのだ。
カッコいいな。
綺麗な顔してるな。
色白のうなじが、溜まんない。
キリっとした上向きの整った眉、一重まぶたの切れ長の瞳。
口唇もプクプクしてて、エッチな感じ。
時々口喧嘩した時に、流し目で睨み付けてられるんだけど。
実は、その時の表情が、溜まらなくゾクゾクして、カッコいいの!
とにかく、人間だとは思えないくらいカッコいいの!
「おい、おまえ。さぼってんじゃねぇよ」
私の背後で聞こえる低い声。
振り返ると、薄目で睨む永田さん。
凄く近くで、言われて私はまた、心臓がバクバク。
「ふん!どいてよ!」
私は、知らん顔して熱燗を三番テーブルへ。
ビックリしたー!(照)
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