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二十三時に店の、のれんを下ろして、後片付けを済ませて、日付が変わる頃に私と永田さんは店を出る。
「今夜は二人ともありがとね。明日からはしばらくは二人きりで店の切り盛りだから、頑張るんだよ」
女将さんは、嬉しそうに話す。
二人きりか。
どうしよう、緊張しちゃう。
「永田も敏子ちゃんも、いつもの調子でいいからね。店の客はみんな常連客だから。そんなに固くならなくて、いいから」
私と永田さんは、返事をする。
「じゃ、俺帰るわ」
そして、私も、
「おやすみなさい、女将さん」
私は自転車に股がり、永田さんはシルバーの単車に股がり、メットをかぶって、私に一言。
「明日からは、よろしく頼む」
えっ?
私はその言葉に驚いて、立ち尽くす。
私の横を、凄い音を立てて、走り去って行った。
その永田さんの姿を、私はいつまでも見つめ続けた。
だから、好きなんだよ。
だから、前よりも好きになるんだよ。
あぁやって、予測も付かない時に、そっと優しい言葉を掛けてくれるから。
だから、好きになっていく…。
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