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ズ、ズ、ズゥゥゥゥン…………。
負のオーラが、雪菜から溢れんばかりに出ている。
てか、溢れてる。
その雪菜の隣で、沖田は食べかけの抹茶大福を食べていた。
この体だと、普段なら一、二口で食べ終えてしまう大福をたくさん食べることが出来る。
大好きな甘味をたらふく食べることが出来るなんて、この上なく幸せだ。
どうやら沖田は、この体を地味に気に入っているようだ。
「雪菜さん、大福食べないんですか?」
「沖田さん、どうしてそんなに落ち着いてるんですか……?」
「僕の質問に答えてください」
「そんな質問よりあたしの方が重要だろうが!!!」
大福より今のこの状況をどうにかするのが先決だぁぁぁあ!!!
雪菜の質問と考えがちょっとズレてることは………あえて何も言うまい。
「さぁ、答えろ!!」とヤンキー並の怖さで沖田に詰め寄ると、沖田は小さなため息をひとつついて答えた。
「だって、考えたって仕方ないじゃないですか。考えるより、楽しんだ方がいいでしょう?こんな超常現象、そうそう体験できるもんじゃないですよ」
「う、確かに……」
「甘味食べ放題、イタズラし放題じゃないですか!このままでもいいかも、って考えたりしなくもないです」
「で、でも、こんなときに敵が来たり……巡察とかもどうするんですか?」
「そのへんは……流れに任せましょう」
「適当だなオイ!!!」
でも確かに、この状況をどうにかする考えなど浮かぶはずもない。
沖田の言うとおり、ポジティブに考えよう。
楽しんだもん勝ち、てやつだ。
「よーし!じゃあ、さっそく楽しみましょう!!」
「そうですね。このままここにいるのも暇ですし」
「はい!!あたしは……どこに行こうかな」
「そのへんをブラブラしてればいいんじゃないですか?」
「そうてすね。じゃあ、また後で!!」
「はい」
ちっちゃな沖田と雪菜は、この体を満喫すべく、各自どこかへ散らばっていった。
ふたりの食べていた抹茶大福の包みと、飲みかけのお茶だけが、台所にポツンと残されていた。
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