沖田 総司と一寸隊士の話

8/24
前へ
/1635ページ
次へ
ズ、ズ、ズゥゥゥゥン…………。 負のオーラが、雪菜から溢れんばかりに出ている。 てか、溢れてる。 その雪菜の隣で、沖田は食べかけの抹茶大福を食べていた。 この体だと、普段なら一、二口で食べ終えてしまう大福をたくさん食べることが出来る。 大好きな甘味をたらふく食べることが出来るなんて、この上なく幸せだ。 どうやら沖田は、この体を地味に気に入っているようだ。 「雪菜さん、大福食べないんですか?」 「沖田さん、どうしてそんなに落ち着いてるんですか……?」 「僕の質問に答えてください」 「そんな質問よりあたしの方が重要だろうが!!!」 大福より今のこの状況をどうにかするのが先決だぁぁぁあ!!! 雪菜の質問と考えがちょっとズレてることは………あえて何も言うまい。 「さぁ、答えろ!!」とヤンキー並の怖さで沖田に詰め寄ると、沖田は小さなため息をひとつついて答えた。 「だって、考えたって仕方ないじゃないですか。考えるより、楽しんだ方がいいでしょう?こんな超常現象、そうそう体験できるもんじゃないですよ」 「う、確かに……」 「甘味食べ放題、イタズラし放題じゃないですか!このままでもいいかも、って考えたりしなくもないです」 「で、でも、こんなときに敵が来たり……巡察とかもどうするんですか?」 「そのへんは……流れに任せましょう」 「適当だなオイ!!!」 でも確かに、この状況をどうにかする考えなど浮かぶはずもない。 沖田の言うとおり、ポジティブに考えよう。 楽しんだもん勝ち、てやつだ。 「よーし!じゃあ、さっそく楽しみましょう!!」 「そうですね。このままここにいるのも暇ですし」 「はい!!あたしは……どこに行こうかな」 「そのへんをブラブラしてればいいんじゃないですか?」 「そうてすね。じゃあ、また後で!!」 「はい」 ちっちゃな沖田と雪菜は、この体を満喫すべく、各自どこかへ散らばっていった。 ふたりの食べていた抹茶大福の包みと、飲みかけのお茶だけが、台所にポツンと残されていた。
/1635ページ

最初のコメントを投稿しよう!

720人が本棚に入れています
本棚に追加