52人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
龍を刀に封印してから数日後――。
五稜郭から霊神の城が消えた。
「慶臣!」
鳥明の背に乗って地上へ降りてきた琴葉が叫ぶ。
「琴葉。どうだった?」
「駄目ね。全然見つからない」
「……そうか」
首を左右に振る琴葉に、慶臣は小さくため息をついた。
あの日、霊神・妖怪ともに多くの犠牲者を出した戦が終わる頃、巳陰と羽陽の姿が消えていた。
「巳陰様と羽陽様、いったいどこに行ったのかしら……」
「……さぁな。これだけ捜しても見つからないんだ。もう、函館の外にいるのかもしれない」
「……そうだとしたら、この先、霊神はどうするの?」
不安げな表情で訴えかける琴葉に、慶臣は真っすぐに視線を向けた。
「やることなんて決まってるだろ。人と妖が共存できる世界を創る――、霊神は、人側の架け橋になる」
慶臣の言葉に、琴葉は一瞬、目を丸くし、クスっと小さく笑う。
「――そうね」
「休んでる暇なんてねえぞ。あいつらのところに行く」
そう言った慶臣は、琴葉とともに鳥明の背中に乗り、彼らがいる元へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!