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慶臣の中で限界が近づいている。時折、睡魔が邪魔をして足がふらついてしまう。
「……しっかりしろ、俺」
「何か言ったか?」
「いえ……。何も……」
自分を励ますが、瞼が重い。大誠に適当な事を言って誤魔化すと、遅れをとらないように速度を上げた。しばらくして城へと戻ってくると、大誠は霊神の本拠地がある地下には行かず、階段を上り始めた。
「何処へ向かっているのですか?」
「…………」
大誠は質問に答えることなく、着々と上へと登って行く。
一歩一歩、階段を歩く度に心に芽生える緊張も増していくような気がした。思わず生唾を飲んでしまう。この先は、徳川様がいる部屋がある。
その手前に集会をする広い部屋があった。
「徳川様にお会いになるのですか?」
「そうだ。時期当主になるであろうお前にも、聞く権利がある」
「俺を殺すつもりじゃなかったんですか? 信用……なくしていますしね」
「お前を殺すのは行動次第だ。愚かな真似をしなければ、お前は今まで通り霊神の時期当主候補に変わりはない。今のうちに徳川様に紹介しておいた方が良い。その方が、お前の為だ」
「俺のため……?」
大誠の言葉に疑問を感じながらも、慶臣は後ろをついて歩いた。彼の考えていることが理解できない。少なくとも、大誠や巳陰、羽陽にとってみれば、慶臣の行動や言動は霊神の掟に背いているようなもの。
それを分かっていながら、何故、今の状況で徳川様と顔を合わせなければならないか。
滅多に会う事を許されないのに、次期当主候補だからと理由をつけて、お目に掛かれる人物ではない。
一体、徳川様に会うという口実の裏に、どんな陰謀があるのか。
慶臣は大誠の大きな背を睨みながら、考えを巡らせていた。
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