第三章

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 しかし、今はそんな二人が憐れに思えてくる。忠誠を誓って、自分の想いを押し殺してまで大誠の命令に従ってきたのに、刀のために命を落とせなど、あまりにも酷い仕打ちだ。  それが慕ってきた者に対する命令とは思えない。 「あんたは、仲間をなんだと思っているんだ! 羽陽様も巳陰様も、どんな命令に従ってきただろう。それなのに、二人の刀を使うために死んで行けと言うのか!? 羽陽様も巳陰様も……俺達下っ端の奴も……。あんたらの人形じゃねえんだよ! それなのに、刀には犠牲が必要だとっ!? そんなこと、許されると思っているのかよ!!」 「なにを熱くなる? 我らには替え玉などいくらでもいるだろ。お前のように孤児となった者を取り込めば、霊神は不滅だ」 「ふざけんな! 俺は、あんたに拾われて嬉しかったんだ! 霊神に入って後悔したことなんて、一度だってなかった。あんたが親の代わりに育ててくれて、仲間に助けられて……。たくさんの愛を貰ったから、俺はここまで生きてこられたのに……っ」 「愛だと? ふはっ!! 笑われせるでない! 霊神の駒を育てるのに愛などあるわけないだろう!! 夢を見るのも大概にしろ!!」 「……っ」  慶臣の叫びも既に欲に溺れた大誠には届かなかった。
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