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掴んでいた手を引き離されると、そのまま床に叩きつけられた。突き飛ばされた勢いで、慶臣は体を強く打ってしまう。
「お前には、二人の息の根を止めてもらう。それが出来なくとも、羽陽と巳陰が代わりに奴らを殺すだろう。そして、刀が入った時、お前にはその使い手となってもらう。覚悟しておけ。逃げられぬぞ」
「あんた、本当に腐っている。昔はそんな人じゃなかっただろ……」
「過去に囚われるな。昔と今は違う」
「…………」
慶臣は悔しさで声が震えてしまっていた。大誠は振り返ることなく、冷たい言葉を慶臣に浴びせる。暗い廊下に慶臣を残したまま、大誠は隠し扉の中へと入って行く。
大誠の姿が消えても、慶臣はその場をすぐに動くことが出来なかった。
「どうして変わっちまったんだ……っ。あんたにとって、俺達は道具でしかなかったのかよ……っ」
血が流れていた拳を床に叩きつける。鈍い音と共に、慶臣の手が震えた。手の痛みなど、どうってことはない。寧ろ、刺されたような胸の痛みの方が強かった。
大誠の考えを一人知ってしまった慶臣は、責任と恐怖心を一度に背負い込んだかのような不安感があった。
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