第四章

2/38
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
 霊神が美晴と琉衣を探し始めてから、一週間が過ぎようとしていた頃――。  未だ、二人の足取りを掴むことが出来ない。霊神の中でも苛立ちが目立ち、大誠の冷静さも失い始めていた。  だが、そんな中でも慶臣は一人、落ち着いた表情をしていた。他の連中のように苛立ちもなければ、焦りもない。ただ一つ上げるとしたら、表情にあるのは、美晴と琉衣が捕まらずにいる事への安心した気持ちだけだ。 「慶臣。また考え事? それとも、美晴ちゃん達が心配?」 「いや、心配はしてない。あいつらは捕まらないだろう、きっと。それで? 俺に何か用があるんだろ?」 「うん。大誠様が会合を開くって。慶臣も来て?」 「……ああ、分かった」  琴葉の浮かない表情を見て、大誠の話が重大なのだと知る。こんな忙しい中で会合を開くことは滅多にない。徳川から命令が下ったのか、それとも大誠の独断での会合か。  どちらにせよ、慶臣には気が向かないものだった。 「皆、集まったようだな」  慶臣が霊神の会合部屋へと足を踏み入れた途端、仲介派組の年配の男が一言漏らした。部屋には既に各隊の隊長が揃っている。大誠の姿はまだない。仲介派組や武闘派組と二つに分けられてはいるものの、またそこから細かく分けられていた。部屋に集まった二つの組を合わせても、十人は超えている。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!