第四章

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 皆が重い空気の中、ただ口を閉ざしていると会合を呼びかけた張本人がやってきた。大誠が一段上がる場に座ると、両側に当然のように羽陽と巳陰が座る。慶臣と琴葉は、武闘派組と仲介派組が向き合うように座る中に、同じようにして列を作った。互いに向き合っていても、大誠が座るまで頭は軽く下げていた。 「当主、聞きましたぞ。幕府が倒幕したと言うのは本当なのですか?」 「倒幕しては、我らはこれからどうするのだ!?」 「主君がいなければ、我らの道が進まんぞ」 「当主、それで我らを集めたのですか?」  大誠が座り、皆が顔を上げた時、先程の年配の男が本題に入った。仲介派組にいた者達は知っていたことで、それを知らない武闘派組の連中は驚きが隠せないようだった。知っていたのは慶臣も同じだ。  本題に入った途端、仲介派組の者に驚きの表情はなかった。 「その事実は本当だ。我が君主、徳川も幕府と共に無くなるだろう。そこでだ。君主のいない霊神に、未来はない。ならば、我ら再び幕府を創り出せば良いこと。そのためには刀が必要だ。龍黒刀で幕府を倒した者達を薙ぎ払い、ねじ伏せよ。  噂によれば、近日戦が起こるとのことだ。戦場はここ、五稜郭。相手はおよそ三千人だ。幕府が倒れたことで、京の新撰組も崩壊。五稜郭の戦いには、新撰組の副長、土方歳三も現れるとの情報がある。その戦いに、我ら裏新撰組・十一番隊も出陣することを決めた。一刻も早く刀を見つけろ。文句は聞かんぞ。これは命令だ。皆、急いでくれ。刀があれば我らの勝利は決まったも同然だ」 「新撰組の? 土方と言えば、あの鬼の副長と呼ばれる男……。中々の切れ者だと聞いておりますが」 「ああ、そうだ。奴は頭が良い。そして、戦場では人の情念はない。戦となれば、奴に会うこともあるだろう。本家の副長に遅れを取るなよ」 「はっ。しかし……。本当に我らだけで幕府を再び立ち上げることは出来るのでしょうか?」 「何を弱気な。俺達は他の人間よりも強いのだぞ。自信を持つのだ。それに私がこの座を降りれば、次は慶臣が霊神を引っ張ることになる」 「おお、なんと。次の当主をお決めになられたのですね。慶臣が我らの中心になれば、霊神も安心でしょう」
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