No Name

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アダムが帰ってからしばらくして、他にすることもなかった僕は、研究室に戻り最後のプログラムを組み込む作業に取りかかった。 そのプログラムとは、僕自身がこの装置を使って願いを叶えることができないようにする、という物だ。 もちろんこの装置を使って悪事を働こうという気は無いが、人間は時と場合によって約束をねじ曲げて自分の考えをごり押すことが多々ある。 客観的に考えられているだけマシかもしれないけれど、僕だって例外ではないだろう。 「このプログラムはそんな時のための予防線だ」 僕は食事をとることも忘れてキーボードを打ち続けた。 ようやく完成した頃には、夜は明けて、外はすっかり明るくなっていた。
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