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「それより、何か用があるんでしょ?」
「あぁ…いや…特にないんだけど、池谷かなぁと思って、つい…」
「ああ、そうなんだ。覚えててくれたんだ。何か、嬉しいな」
俺は本当に嬉しかった。
自分で言うのもあれだけど、
俺の顔は平凡だから他人に覚えてもらえないんだよな。
だから、覚えてもらえるというだけで嬉しくなる。
「そんなに嬉しいか?」
俺の顔がにやけていたのだろう、金城が聞いてくる。
「ああ、嬉しい。俺の顔って平凡だから、覚えてもらうのが大変なの。一発で覚えてもらったことなんて数える程しかないよ」
「ふーん、平凡ねぇ…。俺はそんな風には見えないけどな」
「は?どういうこと?」
俺は訳が分からず、軽く喧嘩腰で聞いた。
「そのままだよ。池谷は平凡顔じゃない。優しさや真面目さが顔に出てる。カッコいいよ」
予期せぬ言葉に俺は固まる。
そして顔が熱くなる。
自分でも分かるくらいに。
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