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ドールギ王国領土内、ディストル地方ハウアの街。冒険者達が集う酒場風の施設の暖簾を潜るは、怪我より復帰した2人の駆け出し冒険者。
フィン・ナキアスとラキナ・フォードが、先日煮え湯を飲まされたダンジョンの事をとある人物に相談しているところだった。
「――――って訳なんですよリアさん」
リアと呼ばれた女性は茶系の長髪を後ろ手で結びながら気になる報告を聞いている。曰くそのダンジョンに以前の面影はなく、全くの別物になっているらしい。
「それで哀れにも、その何者かに命を救われたという事ですか」
報告にあった事柄で一番興味をもったのは、白髪の男について。雑多な魔物を指揮していたこの男は一体何者なのか。
彼等冒険者はダンジョンマスターなる存在がいることは知っている。2年前大陸を揺るがした元凶、魔王が現れたが故に。
しかし数多に存在するダンジョンの全てにダンジョンマスターがいる訳ではない。自然に発生したダンジョンの方が圧倒的に数は多く、そんな人物と合間見えるなどかなり低い可能性だ。
だがフィンとラキナは出会ってしまったらしい。その男は第二の魔王か、それともただのダンジョンマスターなる存在か。
「リアさん! 一刻も早く軍に報告しないと、また私たちみたいな犠牲者が出ちゃいますっ!」
「俺も同感です。あいつは言葉じゃ言い表わせられないくらいに、えっと、とにかく不気味なんですよ!」
「無理な話ですね」
さらりと一蹴するリア。反論しようとする2人を黙らせ、何故無理なのか説明する。
「魔王を退治してから約2年、似たような報告は幾つもありました。新しいダンジョンを見つけた、これは新しい魔王じゃないか? 今までいなかった魔物を見つけた、これは第二の魔王の仕業じゃないか? 馬鹿のひとつ覚えのように魔王魔王魔王と、幾つもの誤った報告がありました」
新しいダンジョンを見つけた、今までいなかった魔物を見つけた。そんな自然に発生する現象を全て調べられる程国は暇ではない。
「それに貴方達は駆け出しの初心者。そんな貴方達の言葉に耳を傾ける者はいないでしょう」
「そんなぁ、リアさん酷いです」
「ですが事実ですから」
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