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数々の魔物を引き連れ、洞窟から出てから少しばかりの時間が経過した頃。
森の中を歩く一行に襲われる魔物が数匹。それはハウンドと呼ばれる狼のような魔物。狼属ハウンド種、最下位の魔物である。
「ギギィ!!」
「ガアッ!」
双頭のゴブリンを中心にしたゴブリン達が6匹がかりで2匹のハウンドの臓物を撒き散らし、コボルトが逃走するハウンドの足を掴み上げ、地面に叩きつける。
「殺し過ぎるな、何匹かは生け捕りにしろ」
死体より生きている方が融合で誕生する魔物の能力値は向上する。知識として知っていたクロニアはなるべく生け捕れと命令するが手加減をして折角召喚した配下が死んでしまっては元も子もない。
前途多難だなと、クロニアはまたため息をつくのだった。
「――――」
「ん?」
木々の合間から感じた視線にクロニアは意識を傾ける。そこにいたのは闇属性の精霊、影の騎士。
「止めろ、襲うな」
今にも襲い掛かろうとした配下を宥め、クロニアは魔力を纏った手を伸ばす。
本来精霊を呼び出し契約する際は、先ず魔法陣を描かなければならない。魔法陣を描き、そこに魔力を流し、呼び出した精霊に魔力を与え契約する。
しかし今は必要ない、何故なら目の前にいるからだ。影の騎士の契約条件が魔力の譲渡なら配下にできる、契約に縛りつける事が出来る。
「……影の騎士よ、契約に応じるか?」
「――――」
黒い靄に包まれた腕を伸ばし、影の騎士はクロニアの手を掴む。
「契約、成立だ」
クロニアのもつ魔力の一部を譲渡し、契約は果たされる。これで意志無き影の騎士は造物主に従う者となった。
偶然出会い、配下となった影の騎士。この出会いはクロニアの願望によるものか。
探索は続く、まだまだ続く。次なる出会いも偶然か、はたまたクロニアが願った故のものなのか。
それは誰にも判らない。
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