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パチパチという何かを燃やす音と、鼻腔を擽る仄かな香り。誰かが森の中で何かを燃やしているのだろう。
「全員静かにしろ、それと着いてこい。静かに、ゆっくりとだ」
人気のない森で誰かが何かをしている。探索中の冒険者か、それとも別の目的をもった誰かか。
クロニアは進む。枯れ枝を踏まないように最大限警戒しながら歩を進める。
僅かに灯る明かりを見付け、より一層息を殺し、気配を闇に紛らわせる。
配下の魔物共も最大限の警戒で後ろに着いていき、クロニアの耳に声が届いた。
「お頭、本当にこんなのが高く売れるんですかい?」
「ああ。どこぞの変態成金野郎がご所望の品だ、歳も見た目もビンゴ!こりゃあ高く売れるぜぇ?」
下品な言葉遣いに下品な声、姿を確認するべく木の影から窺うと、4人の男達がいた。
その傍には、静かに横たわる大きな袋が。
「……殺せ。1人は喋れる程度に生かし、他は全員殺せ。今まで出会った魔物共のように、奴等の臓物を、脳髄を、撒き散らせ」
「――――」
始めに動いたのは、影の騎士。
闇に紛れて接近する騎士の手に握られる、黒い靄に覆われた剣が一振り。
「んあ?」
突如何者かの影が視界の端に映り込み、次いで振るわれる一閃。
影の騎士は主人の命令通りに脳髄を辺りに撒き散らす。他者の命を、奪い取る。
「殺せ」
コボルトが俊敏な動きで、突然の出来事に困惑している男の頭蓋を叩き割る。飛び散る血肉に目もくれず、更なる破壊を事切れた骸に次々と与えていく。
「殺せ」
ゴブリン達が悲鳴を上げる男の腕に棍棒を振り下ろし、泣き喚く顔を愉しげに見つめ、集団で全身隈無く殴り潰し、その臓物を撒き散らす。
「そいつは殺すな、話がしたい」
あまりの光景に恐れ慄き尿を垂れ流す無精髭の男。
何の前触れもなく仲間を惨殺した魔物共を率いる者。クロニア・レプリを見て、男は悟った。
不条理な迄に強大な力の差と、圧倒的恐怖という感情を。
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