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クロニアが今から始めようとしている行為は決して良い行為ではない。死した骸を再利用するなど、決して良い行為などではない。
だがしかし、クロニアはそれを選択する。哀れにも殺された少女の命を、自身の為に、己が感じた偽善の為に蘇らせる。そんなものはただの自己満足であると知っていながら、彼はそれを選択する。
死にたくて死んだ訳ではない少女を、別の存在に生まれ変わらせる。
「……融合だ」
それは生命の冒涜、禁忌とさえ言えるだろう。だがクロニアは既に禁忌を犯している。無から有を生み出している。
融合に必要な素材は別段明記されていない。ならば人間でも可能な筈だ。無から有を生み出せるのならば、あまりに酷い素材でない限り可能な筈だ。
「名も知らぬこの少女と」
己の手首に剣をあてがい、薄く肉を裂く。
「俺の血を、融合させる」
己の血肉と少女の遺体。初めて行うこの行為こそが、これこそが“魔王”の真骨頂であるのだと。
クロニアは心の内で理解した。それと同時に強く願った。
クロニアの右目が、今まで以上の強烈な閃光に包まれた。
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