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魔法陣が浮かび上がる、頭上から、地面から、左右から。
上下左右に展開される幾何学的な魔法陣。今までの融合や召喚とは明らかに違い過ぎるその光景は禍禍しくも神々しく。クロニアの右目に、解読不可能な文字の羅列が次々と浮かび上がった。
上下左右から展開した魔法陣の中心から出現する触手にも似た何か。それは物言わぬ少女の遺体を優しく掬い上げ、クロニアの流した血液をも掬い取る。
中心へと運ばれていくそれらは完全に視界から消え失せ、静寂が場を支配する。
そしてそれは現れた。
卵のような全てを塗り潰す漆黒の球体が上部の魔法陣から生まれ落ち、下部と左右の魔法陣から現れた漆黒の煙がそれを覆い尽くす。
煙に覆われた卵の全貌を見る事は叶わないが、音が聞こえてきた。内側から殻を打ち破る音がクロニアの鼓膜を強く刺激した。
そしてそれは誕生した。クロニアの視界に映るは血塗れ色の頭髪をした十代半ばの少女の姿を為した者。
徐々に煙が晴れていき、彼女の全貌が明らかになっていく。顔しか見る事が叶わなかった先程とは違い、今は彼女の全てを確認できる。
フリルのついた血塗れ色のドレスを着込み、同じく血塗れ色のマフラーが彼女の口元を覆い隠している。目の下には薄らと隈があり、これが寝不足と関係しているのかは定かではない。
閉じられていた瞼を開いた瞳には、どこか不気味だが強い意志が秘められていた。
「お前は、何だ」
少量の警戒と多量の興奮が混じった声で造物主は疑問を贈る。
それに答えるは、魔王に従う新たな配下。
「……キシッ。ボクの名前は血塗れの姫君ことアイギスだよ、ぎすぎすした愛って覚えてね」
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