第四話 禁忌と偽善と侵入者

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 血塗れの姫君アイギス。魔力と知力は現在クロニアの所有する配下の中でもダントツで最強だが、それ以外は期待した程ではない。というか低い。  局所的には優れているが何とも使い所に悩む魔族だ。 「キシっ。ボクを生み出してくれてありがとう魔王さま」 「……魔王?」  眉を潜め、思わず疑問が零れ出る。クスッと笑うアイギスは魔王たるクロニアを見つめている。  彼女の頭髪と同じ、血塗れ色の瞳が軽く歪む。 「違うの? 魔王さまは魔王さまだよ?」  さも当たり前だとでも言うように発した言葉。  何故か判らないがクロニアは感じた、己の心が僅かに弾んだのを。 *  ――と、此処までが1ヶ月程前の話。  現在ダンジョンに存在するクロニアの配下は、そこそこ戦力になる程の規模にまで膨れ上がっていた。  双頭のゴブリン5体、ゴブリン35体、コボルト20体、土人形40体、多腕の土人形2体、キラーワーム3体、一つ眼の鎧鳥4体、ハウンド13体、ガーゴイル5体、影の騎士が1体。  そして唯一の魔族、アイギス。  多腕の土人形は融合ではなく、アイギスによる召喚で生み出した魔物だ。ダンジョン拡張の仕事は捗るがやはり脆く、作った意味はあまりない。  一つ眼の鎧鳥とハウンドは森の探索中に見付け、従えさせたのと、召喚可能になったので生み出した魔物。  一つ眼の鎧鳥は堅い身体をもつが飛行は可能。しかし飛行時間はあまり長くない。攻防共にそれなりに優れているが、残念ながら知能はゴブリンにすら劣る。  ハウンドはコボルトに僅かに劣る強さを誇り、知能はゴブリンを上回る。嗅覚も鋭く敏捷にも優れ、森の探索が主な仕事だ。  キラーワームは魔力耐性と知力はゴブリン並だが、それ以外はクロニアの配下の中でも随一。影の騎士を除いての話ではあるが、いい戦力として期待できる。  ガーゴイルはある一定数の魔物を従えた為に召喚可能となった魔物。石のような皮膚と空を飛ぶ翼、知能以外はそれなりに高い魔物であり、キラーワームと並んでいい戦力として冒険者の前に立ちはだかってくれるだろう。
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