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「どうした」
「キシっ。新しい魔物、召喚してもいい?」
いつものように不気味に笑い、アイギスはこれまたいつものようにお願いをする。
その言葉に、またかとため息をつくクロニア。彼の癖になりつつあるため息の原因は、実は半分くらい彼女のせいであるのだが。
血塗れの姫君ことアイギスは、それに気付いているのだろうか。
「駄目だ」
「……なんで?」
「お前の召喚は通常より多くのDPを消費する割りには、大した者は生まれないだろう」
例に上げるのなら多腕の土人形か。通常より3倍近いDPを消費した割りには役に立たない、腕の本数が増えただけの存在。
アイギスを生み出した事により幾つかのボーナスを得たとはいえ、無駄遣いは宜しくない。
「……キシっ。次は頑張るから」
「駄目なものは駄目だ」
必死のお願いを却下し、クロニアは無惨にも拒絶する。涙目になるアイギスの懇願する瞳に少しばかり心が痛んだ気がしたが、顔を逸らす事で視界から外す。
「ぐすっ……」
視界からは外れたが今度は鼓膜を刺激する泣き声がクロニアに届いた。初めての人型、初めての魔族、そして初めての子守。
帝国に居た頃も勇者であった頃も、子守とは無縁な生活をしていたため、子供の相手は慣れないものだ。
「ふぅっ、んぐっ……」
「……はあ」
目に一杯の涙を溜め、口から漏れ出る声を聞いて。
深い深いため息をつき、クロニアは了承の意を彼女に告げる事にした。
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