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「ん?」
クロニアがお仕置きという名の擽り地獄をアイギスにしてから30分も経過していない頃、突如彼の右目に文字の羅列が現れた。
「はあっ……はあっ、あふっ」
「侵入者か」
息も絶え絶えなアイギス、所々乱れている衣服に紅潮し上気した頬。見る者が見れば勘違いをしていただろう。
「アイギスは……無理か」
森の探索に向かった魔物はまだ帰っていない。侵入者とすれ違ったのか、はたまた皆殺しにされたのか。
「影の騎士は居るか?」
「――――」
まるで最初から傍にいたかのように姿を現す影の騎士。流石生前騎士であった者故か、その佇まいには気品が垣間見える。
「侵入者だ。ゴブリン部隊を率いてキラーワームの居住区に誘き寄せろ」
立つ気力すらないアイギスを抱き上げ、クロニアは自室へと歩を進める。
「そろそろダンジョンマスターらしく、侵入者を迎え撃とうじゃないか」
主人に忠実な騎士は魔王の言葉に跪き、深く頭を垂れる。
第二の魔王たるクロニアのダンジョンに踏み入ったのは、哀れな冒険者か。
それとも確固たる意志を有した別の者か。
「愉しみだな」
誰にでもなく、魔王はそっと笑みを浮かべた。
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