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「此処だよなあ? 半人前のガキ達が言ってたダンジョンはよお」
仲間にそう問うのは筋肉の鎧に包まれた大男。中堅冒険者から頭一つ分抜きん出ている彼は、格闘魔法使いのヴァルグ。
口は悪く、見た目も何処のゴロツキの親分かと思ってしまう程粗暴だが、実はそんなに悪い男ではない。
「そーですよヴァルグの旦那、リアの姉ちゃんが言ってたから確かな情報ですよ」
答えたのは短剣と弓を装備した冒険者、弓使いのサニス。軽快な口調とは裏腹に眼前に聳える洞窟を見据える彼の瞳は、鋭い光りを帯びていた。
「さてと、んじゃ行きますか」
「応よ」
ダンジョンに侵入する彼等を阻む者はもういない。小汚い血で汚れた草花を踏み締め、今ダンジョンを踏破するべく侵入を開始した。
もう彼等に、後戻りという選択は存在しない。
「よっと」
「ふんッ!」
隊を成して襲ってくるゴブリンを切り裂き殴り砕き、奥へと進む2人の冒険者。
「なんだあ? 雑魚しかいねぇじゃねえか」
「油断は禁物ですよっと」
弦を張り、何もない空間に向かって矢を放つ。すると入り乱れる洞窟内の曲がり角から現れたゴブリンの頭蓋を見事貫き、容易く仕留める。
弓使いであるサニス、彼も中堅の中では一歩抜きん出た冒険者なのだろう。
弓の名手エルフには僅かに劣るが、それでも優れている腕前を有していた。
「何だかなあ、財宝っつう財宝も見当たんねえしよ」
「でもおかしいですよ。確か此処は獣属の魔物ばかりのダンジョンだった筈なんですがね」
「あー、確かにそうだったなあ」
「でしょ? なのに出てくるのは鬼属最下位のゴブリンばかり。あと森ん中にも変なの混じってたじゃないですか」
サニスが言う変なのとは、ガーゴイルを指しているのだろう。
「あの少しばかり堅かった奴か。ガーゴイルだっけか? あいつは森には住んでねえ筈だよな」
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