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飄々と会話をする彼等は気付かなかった。別の異変に意識を傾けていた彼等は気付く事ができなかった。
何者かの命を承った忠実なる騎士が、人知れず冒険者達の行く道を誘導していた事に。
「お? 何だあれは」
ヴァルグの視線の先にあるのは重厚な石の扉。普通の洞窟には存在しないであろうそれに警戒心を顕にしながら近づいていく。
「リアの姉ちゃんの話には無かったもんですね。どうしますヴァルグの旦那? 行きますか?」
「当たり前だろうが、ふんっ!」
重厚な石の扉に両手をつき、力任せに開くヴァルグ。血管が浮き出る程力を込めて扉を開いた先には――。
醜い巨大な芋虫が3匹。
「っ!」
予め構えていたサニスが素早い動作で弦を引き、矢を放つ。寸分の狂いなく右側のキラーワームの胴体に突き刺さったが、分厚い皮膚によりダメージは殆ど与えられなかった。
「おらあぁぁあッ!」
ヴァルグが普通の冒険者より二回り程大きく分厚い筋肉に覆われた豪腕でキラーワームの胴体を殴り、次いで振り回される尻尾を掴み動きを止める。
「ふっ!」
サニスが服に仕込んでいたナイフを幾つも掴むと、ヴァルグが動きを止めたキラーワームに向けて投げつけ。
軌跡を描きながらぶよぶよの肉に次々と突き刺さり、聴くに絶えない耳障りな悲鳴を上げると。
「燃え上がれ!」
灼熱の火炎を帯びたヴァルグの拳に貫かれ、1匹のキラーワームは消し炭と成り果てた。
いとも容易くキラーワームを倒した2人、しかしキラーワームはまだあと2匹残っている。
奇声を発し振り回される尻尾を地面すれすれに身を屈める事で回避し、サニスは2本の短剣を巧みに扱い分厚い皮膚を裂く。
一撃でも当たれば致命的、だがキラーワームの動きは速いとはいえない。冷静に事を進めるサニスとは対照的に。
「らあああッ!!」
ヴァルグは真っ正面から向かい合っていた。
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