第四話 禁忌と偽善と侵入者

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 雄叫びを上げ、真っ正面から火炎の拳で殴り付ける。殴られた箇所が黒く焦げるも、キラーワームは負けじと小さな歯の連なる口を大きく開き、冒険者の血肉を喰らいに反撃する。  2人が別々のキラーワームと激しい戦闘を繰り広げている最中。ヴァルグとサニスの視界の端で、巨大な繭の中に潜む何かが。  ぴくりと小さく動いた。 「あらよっと」  麻痺系の毒を仕込んだ短剣が漸くキラーワームの肉に到達し、それから徐々に動きが鈍くなるそれを見て、サニスは額から流れる汗を拭う。 「さーてと、こっちはもう終わりますよヴァルグさん」 「ああそうかい!」  サニスの視線の先には、最早消し炭になっている魔物の頭を踏み付けているヴァルグの姿が。  両名共に中堅より一歩抜きん出ている冒険者だ。中位でしかない魔物風情に遅れを取るわけがないのは至極明快。 「んじゃ先進みますか? 野生のキラーワームより幾分かでかくてちょっと厄介でしたけど、その分期待出来ますからね」 「そうだな―――っサニス!?」  焦るヴァルグの視線の先に、それに気付かないサニスの視界の外に、影のような暗い何かが現れ。 「へっ?」  侵入者の首を刈り取った。 「んの野郎おおお!」  先程以上に熱く燃え盛る火炎の拳。ヴァルグは見た目とは正反対に勤勉家だ。ひとつの属性しか扱えないがそれを極めんと日々精進している冒険者だ。  中級以下の火属性の魔法ならば詠唱をする事なく発動できる。  獣が如く攻めるヴァルグの怒りに染まった瞳の前にいた者は。 「――――」  現魔王軍最強の騎士が1人。  肉を焼き尽くす炎が影の騎士の眼前に迫るも、騎士にたじろぐ様子は見られない。 「――――」  人には届かない声で何かを呟き、騎士は自身と炎の間に黒い盾を出現させる。  闇属性魔法LEVEL3を誇る騎士からすれば防ぐ事は至極簡単。 「おらああああッ!!」  防ぎ切るのは、簡単ではなかったが。
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