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盾の面積を遥かに越える量の火炎が騎士に迫る。魔法使いとしても中堅といえる強さをもつヴァルグだが忘れてはいけない。
ヴァルグは世にも珍しい格闘魔法使い、魔法を格闘に利用する冒険者。故にこの火炎は、本領を発揮する為の目眩ましに過ぎない。
「――――」
宙に出現させた闇の盾の下から巨大な何かが走り寄る。それは筋骨隆々の肉体を誇る冒険者が、憎き敵を殺す為に突進してきた姿だった。
言葉を発する暇はなく、瞬きすらする余裕はない。一瞬の油断が死に直結する殺し合い。
凄まじい勢いの突進は躱すことは先ず不可能。影の騎士は自身の剣を素早く間に滑り込ませ、剣の腹で受け止める。
「おらあああッ!!」
ヴァルグの決死の勢いを殺す事叶わず、壁に叩きつけられた騎士の鉄仮面の奥に潜む2つの眼が。
鈍い光りを放ち始めた。
「――――」
立ち上がる。凄まじい勢いで壁に叩きつけられながらも、まるで何事も無かったかのように。
発動したのだ、称号と呼ばれる騎士の力が。騎士の誇りが発動する。
1対1で敵と対峙した場合に発動する能力、騎士の誇り。知力を除いた全てのパラメーターが上昇し――。
「――――」
影の騎士の身体が暗い闇に包まれた。
「な、んだとッ!」
ヴァルグは知っていた、騎士の起こしたこの現象を。これは固有スキル【影属性】。
騎士は影に潜ったのだ、死に果てたキラーワームの影に。
この部屋には明かりが灯っている。基本的に薄暗い迷路のような通路とは違い、ランタンのような物が壁に吊り下げられている。
だからこそ影ができる、出来上がる、この部屋は謂わば影の騎士のホームグラウンド。
基本パラメーターを超えた上に固有スキルの【影属性】を扱う騎士を倒すには。
「――――」
生半可な気概では先ず不可能。
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