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「……キシっ。ほらね、成功したでしょ?」
得意気な顔で胸を張り、目の前の蜈蚣に微笑みかけるアイギス。
小さな声で「やったっ」と呟いたのは聞き間違いではないだろう。クロニアからは見えないように小さくガッツポーズをしているのも、見間違いではない筈だ。
「キラーワーム、とは到底呼べないな」
どこからどう見てもキラーワームではないそれに、何か良い呼び名はないか思案する。
そんなクロニアに声をかけたのは、この蜈蚣を召喚した他ならぬアイギスだった。
「……ハルパー」
「ん?」
「ハルパーがいいな」
ハルパー。それは刀身が大きく湾曲した内側に刃のある刀剣の一種の名称。
おそらくあの大顎を見てそれを連想したのだろう。特に不満を感じなかったクロニアは、その案を採用し。
蜈蚣に向けて笑みを浮かべた。
『アァン?』
今回で改めて判った、このダンジョンに足りないのは圧倒的な強さを持つボス。
影の騎士だけでは心細かった、雑多な魔物を幾ら召喚しても拭えなかった不安は。
今、解消された。
(ボスに成り得る存在、力ある魔物。この調子でダンジョン製作を続けていけば……)
深まる笑み、弾む心、歓喜という感情が力強く体内を駆け巡っているようだ。
「ふ、ははっ」
深まる笑みをそのままに、クロニアのダンジョン製作は更なるステップへと駆け上がる。
「キシっ。魔王さまが嬉しいと、ボクも嬉しいな」
初めての魔族と。
『――――』
忠実なる騎士。
『キシシッ。何だか判らねェが、取り敢えず宜しく頼むぜェ』
突然変異の大蜈蚣と。
「ギ、ギギィっ……!」
オマケに泣き崩れるゴブリン。
彼等を率いて元勇者は何を成そうというのか。
それは誰にも判り得ない。
新たなる配下、誕生の日々。
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