第四話 禁忌と偽善と侵入者

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「……キシっ。ほらね、成功したでしょ?」  得意気な顔で胸を張り、目の前の蜈蚣に微笑みかけるアイギス。  小さな声で「やったっ」と呟いたのは聞き間違いではないだろう。クロニアからは見えないように小さくガッツポーズをしているのも、見間違いではない筈だ。 「キラーワーム、とは到底呼べないな」  どこからどう見てもキラーワームではないそれに、何か良い呼び名はないか思案する。  そんなクロニアに声をかけたのは、この蜈蚣を召喚した他ならぬアイギスだった。 「……ハルパー」 「ん?」 「ハルパーがいいな」  ハルパー。それは刀身が大きく湾曲した内側に刃のある刀剣の一種の名称。  おそらくあの大顎を見てそれを連想したのだろう。特に不満を感じなかったクロニアは、その案を採用し。  蜈蚣に向けて笑みを浮かべた。 『アァン?』  今回で改めて判った、このダンジョンに足りないのは圧倒的な強さを持つボス。  影の騎士だけでは心細かった、雑多な魔物を幾ら召喚しても拭えなかった不安は。  今、解消された。 (ボスに成り得る存在、力ある魔物。この調子でダンジョン製作を続けていけば……)  深まる笑み、弾む心、歓喜という感情が力強く体内を駆け巡っているようだ。 「ふ、ははっ」  深まる笑みをそのままに、クロニアのダンジョン製作は更なるステップへと駆け上がる。 「キシっ。魔王さまが嬉しいと、ボクも嬉しいな」  初めての魔族と。 『――――』  忠実なる騎士。 『キシシッ。何だか判らねェが、取り敢えず宜しく頼むぜェ』  突然変異の大蜈蚣と。 「ギ、ギギィっ……!」  オマケに泣き崩れるゴブリン。  彼等を率いて元勇者は何を成そうというのか。  それは誰にも判り得ない。  新たなる配下、誕生の日々。  【続けますか?】 ←  【やめますか?】
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