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雪を疎むようになった、その理由の記憶。
あの時になくしてしまったものはもう、戻らない。
だからこそ、この手に重なる温もりだけは守ってみせる。
現在(イマ)に繋がる悲しみの記憶を繰り返すのは、二度と御免だから。
カザハは安堵の涙を目元に湛えながらも、そんな決意を込めて夢獏の手を握り返し。
そうしてふと、我に返る。
(……此処、図書館やった)
魔王が正式に認可した学校――通称、魔学。
その一部である図書館、司書として一日の殆どを過ごす職場に居たことを今さらながら思い出し、カザハの顔が瞬く間に赤く染まる。
窓の向こうで降る雪が引き摺り出した追憶に囚われた挙げ句、涙迄流すなんて。
閉館間際故か人気が無い点は幸いだが、恋人に宥められた現実に逃走を図りたくなったカザハであった。
――To be continued.
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