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寄せられた手が、指と指を絡み合わせる。
そっと穏やかに、けれども確かさを伝えるように固く繋がれる温もり。
大丈夫ですよ。
囁かれて零れた一筋の涙。
優しく愛しいその声に、溢れて溢れて止まらない。
「刻、埜…さ…」
雪が降る都度、繰り返し思い出してきた。
けれどこんなにも脆くなることなんて、今迄はなかったのに。
(…ああ、そうか)
温もりを連れ去った雪の記憶は、今尚残った儘。
しかしカザハの胸を満たすのは、恐怖でも悲しみでもない。
――これは、安堵から溢れる涙なのだ。
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