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痛い程の力で抱き竦められる感覚から僅かに遅れ、視界を掠める紅蓮。
聖誕祭を迎える筈だったその日に終焉へと追いやられた故郷を思い出せば、真っ先に浮かぶ記憶がそれだ。
賊の企みを見抜けなかった、愚かな長。
嘗ての自分であった少女は、密かに企てられていた賊の策略にも気付けず、幼馴染みの心の蹂躙を奴等に許すこととなった。
その結果が、前述の光景。
幼馴染みの魔力の暴走が生じさせた、灼熱の炎に故郷が滅ぼされる瞬間を、生涯忘れはしないだろう。
そして何より、心を深々と抉ったのは――庇われた記憶だった。
「カ、スタさ……ご、め…御免、なさ…。ごめ…なさ…っ」
御免なさい、御免なさいと。
あの時の自分は泣きながら、ひたすら謝るしかなかった。
謝罪を繰り返しても、己の過ちは覆らないと解っていたのに。
それでも、謝らずには居られなかった。
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