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城のテラスで一人、ミルトは珍しく溜め息をついていた。
リヒトベルク王国に来た時から器用で天才と言われ、人当たりもよく、容姿もそれほど悪くない彼が、思い詰めたように溜め息をつくところなど、彼のファンが見ればさぞ驚くだろう。
悩んでいることはたった一つ、ダイアナの誕生日が近づいていることだった。
一国の王女である以上、彼女の誕生日パーティーは毎年盛大に行われる。様々な貴族達が彼女の為に訪れ、歯の浮くような賛辞と供に贈り物をするのだ。
ある者はきらびやかな宝石を、新調された華やかなドレスを、またある者は詩人を雇い、彼女の為に詩を作らせたりする。
だが、ミルトは城に仕えているとはいえ、まだ若い召喚士だ。そんな貴族達と並ぶような財力は未だ持ち合わせてはいないし、彼の特技”召喚”ですら、ダイアナの方が実力は上だ。
何せ、ダイアナは伝説の召喚士の生まれ変わりなのだから。
ましてや、二人は特別な関係になっていることも、ミルトのプレッシャーを増幅させている一因だった。
「あなたのことを気に入っているのよ、わからないの?」
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