素朴な疑問

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「あのね、キラ」  それはたまたまお互いの休日が重なった時の昼下がりだった。  キラは、三年間の間に上達した料理の腕をアイシャに奮ってもらったところだ。  アイシャの部屋は、アイボリーの土壁が太陽の光を柔らかく反射していてポカポカしている。その部屋にある、ゆったりとしたソファーベッドに座っていたキラの隣に、アイシャが腰掛けた。  アイシャからは微かに花の香りが漂い、このまま一緒に昼寝でもしたら気持ち良いだろうと、キラは考えていたところだ。 「キラはどうして、リヒトベルク学園に入学したの?」  唐突な質問に、キラは僅かに眉を動かした。  アイシャの緑色の瞳が、不思議そうにキラを見つめている。 「だって、キラは学園に行く必要がないくらい強いし、教養もあるし……」  彼女がそう思うのもおかしくはなかった。リヒトベルク学園は、異世界から誤って召喚されて来た人間が、リヒトベルク王国での生き方を学ぶ為にある。  あとの生徒は自由意思で学園に入学するのだ。基本的には親から子へ、もしくは地域から子へと生き方を学ぶのが、この国の習慣だ。  リヒトベルク学園に近い、シュテルンブルグからの生徒は比較的多くいたが、キラは虹の町イリスの出身だ。
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