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彼女はのみ込みが早く、短時間で身を守る方法、戦い方を覚えてしまった。
初心者にしてはなかなかのものだ。
「ありがとうございます、……?」
「北斗だ」
名を名乗ると嬉しそうに今度は名前を呼んで礼を述べる少女。
考えてみれば、お互い名前も知らなかったんだな。
「シリウスと言います。改めてお願いします北斗さん」
「北斗でいい、堅苦しいのは苦手でな」
そう言うと、ぎこちなく呼び捨てで俺の名を呼ぶ少女…シリウスは照れくさそうにほんのり頬を赤らめて笑った。
そんな彼女につられて自然と頬を緩め微笑み返していた。
「改めてよろしく、シリウス」
ーーー
ーー…
「…迷ったな」
嗚呼…全く。
こうなると分かってたら森の中になど絶対入らなかった。
遡ること2時間前…
俺とシリウスは訳あって共にイスナティアへ向かっていたのだが、その道中また追っ手が彼女を探しに来たらしく、逃げ隠れしながら何とか凌いだものの、魔物が出現して慌てて逃げてきたのだ。
つまりどういうことかと言うと…逃げ隠れしているうちに道が分からなくなってしまい、日が暮れてきている状態なのだ。
こんなことなら逃げなくとも魔物を倒してしまうんだった。
なぜそうしなかったんだと自分を責めても事態は変わらず、心の中で自分を戒めた。
「きっと大丈夫ですよ!」
項垂れる自分を痛々しく慰めてくれるシリウス。それが凶器となってかえって痛い…
「…あぁ、とにかくイスナティアへ着くことが優先だ」
気持ちを切り替え,、都市に着くことが彼女の安全でもあるので前へ進むしか選択肢はなかった。
途中シリウスを気にかけながら森の中を進んでいく。
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