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ーーー
ーー…
枝を踏むような、微かな物音で目が覚め、体を起こして周囲を見渡す。
変わった様子はなく、魔物の気配も感じられなかったので気のせいかとまた眠りにつこうとすると、再度物音がした。
小声でシリウスの肩を揺さぶりながら目を覚ました彼女の唇に人差し指を当てた。
「声を立てるな」
消えた焚き火の側に居るよう彼女に言い、周囲を見渡してから物音がした方へ暫く進んだ後、叫び声が聞こえた。
急ぎ戻っていくと、彼女の姿が見えて安堵したものの束の間、彼女の横頭部に銃が突きつけられ、背後から男の顔が見えた。
…男の顔は暗がりであまりよく見えないが、彼の瞳は殺気と復讐心で満たされている。
「…何が望みだ」
暗闇で見えなかった周囲が、暗雲で隠されていた月明かりで足下が照らされ、丁度男の姿だけが木々で覆われている。
彼はもう一つの銃を俺に向けてゆっくりとこちらへ歩み寄り、月明かりによって姿を露にした。
「…こいつらの死」
静かな怒りでそう答える男の目には光は感じられない…冷めきった氷の眼差しだった。
…冷めた瞳には微かな悲しみを感じさせる…。
大切な何かを失った瞳…
「…あんた何か、もしくは誰かを失ったか」
そう問うと、一瞬だけ彼の目が小さく開かれたような気がした、がかえって彼の逆鱗に触れたらしく、怒らせてしまった。
シリウスの表情が痛々しく歪められる。
「よせ!」
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