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隠し扉や仕掛けがないか、部屋の隅々を触れたり叩いたりした。がこの部屋に仕掛けなどはなく出られそうにない。
深く溜め息を溢しながらシリウスの方を見る…彼女には恐い思いをさせるばかりだな…。
「…すまないな」
彼女は首を振り、微笑みながら有り難うと言う。優しいんだなシリウスは…
暫くそのままじっと考え事をしていると、何やら話し声が聞こえてきた。
「シャル厳しくなったよな、最近寝てないらしいし」
シャル…恐らくあの男の事ではないだろうか?扉越しに立ち聞いていると、シャルという者に婚約者がいて、亡くなった事を耳にする。
戦争の空爆に巻き込まれ遺体は見つからず、棺には婚約者の思い出の品しか入ってないらしい…
監視二人が立ち話を続けるなか、再び扉が開く音が聞こえた。どうやら女性で、監視二人に話している…。
暫くしない間にまた扉が開く音が聞こえ、監視二人が外へ出ていくのが分かり間もなく牢の扉が、音を立てて開かれた。
「さぁ出て」
現れたのは、琥珀の高貴そうな服を纏った焦茶の、ロングヘアをした女性が中へ入ってきた。
タイラーと名乗る女性は、のんびりしている暇はないと言い牢の部屋を出て壁に触れ、押した瞬間狭い道が出現した。
隠し通路だったようだ。彼女は着いてくるように促しそのまま先導していく…着いていっていいものかと疑ったが、ここを抜けるしかなさそうだ。
シリウスにしっかり着いてくるように促し暗い細道を通っていった。足場が確認できない狭い通路を進んでいくと、小さな光が漏れている箇所があった。
彼女が壁を体当たりすると扉のような物体が鈍い音を立てて倒れ、目に眩しさが走った。
…どうやら外へ繋がる通路だったようで、建物の横から外へと出たらしかった。
「後は自分達で。脱走したって言っておくから」
女性はそう言って立ち去ろうとするのを慌ててひき止めた。
「なぜ助けたんだ?俺たちを庇ったために処罰を受けるのでは?」
そう問いかけると、女性は俺たち以外にもこうして捕らえられた人がいたと言う…貴族やそれに関わった者も皆死刑に処したらしい…。
シリウスは貴族の人間だ、俺も関わっていて、少なくとも身を案じてくれたのだろうか?いずれにしても助かった。
彼女がいなければ今頃俺やシリウスはあの世だな。
「用がないならこれで…」
「シーアとは誰だ?」
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