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さっきの道を戻り、再び古屋敷の拠点へ着いたのだが…屋敷内からは物音の一切もなく嫌な静けさが覆う。
門前に立っていた門番も姿が見えない。警戒しながらも屋敷の扉に手をかけて中を覗くと誰もいなかった。
中へ入り誰かいないか叫ぶと、微かに声が聞こえてくる…女性の声のようだが、声に聞き覚えがあった。
どこから聞こえるのか耳をすませ歩くと、地下の方から聞こえてくるのが確認できた。
地下まで降りていくと、鎖が何通りにも連なって厳重に施されている一つの扉があった。
再度声をかけると、どうやらこの中から聞こえてきているようだ。
複雑に掛けられた鎖をどう取り除こうか考える前に、扉越しに声の主が鎖の位置を教えてくれと言う。
鎖の位置を教えると手順を言うから、指示通り動いてほしいと言うので、取り除いていくと呆気なく解除できた。
成程、人の心理を欺く方法だ。先程連なっていた鎖は、実は一本の鎖だけで扉を塞いでいて、目の錯覚で何通りにも見えていたのだ。
鍵も飾りのようで、実際のところ一つしかなかったのだ。
全て取り除き、扉を開けた先にはあの時俺たちを脱出させてくれた、タイラーさんの姿が在った。
「なぜ戻ってきたの?!」
彼女は驚いた様子で目を見開く。自分が逃がした相手がわざわざ敵陣に舞い戻ってきたのだから当然だ。
だがそれよりも、なぜこんな所に監禁されていたのかが気になった。恐らく、俺たちを逃がした事がバレてしまったのではないか?
そのことを尋ねると彼女は頷きながらそれだけじゃないと続ける。
「シャルを止めないと!!」
言いながら彼女が外へ飛び出そうとするのを、腕を引き何があったのか尋ねた。
彼女ははやる気持ちを抑えて次の言葉を口にした。
「…彼は復讐する気よ」
復讐…何の復讐かなんてそんなこと考えるまでもない…
タイラーさんは、シャルは片っ端から貴族、王族の人間を消しにかかろうとしていると言う。
実は彼等が不在なのは、ある王族の御子息がこの森の近くの道を馬車で通行しているのだと言う。
それは一週間も前から考えていた暗殺計画だったらしいのだ。
彼女は彼のしている事に反対派の人間で、作戦は本来、もっと前にされるはずだったが、彼女が阻止していた。
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