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シャルside
「失敗は許されない。気を引き締めろ…!」
小声で仲間たちに、計画の最終確認をとっていると、馬車と護衛が歩いてくるのが見えてきた。
手を低く持ち上げて合図の準備をとる…突如、背後から聞きなれた声が聞こえ驚いて振り向くと、あいつが…
「タイラー?!お前どうやって…」
あの部屋から絶対に出られないはずの彼女が、姿を現した。
その後ろには…
「…お前か」
牢から脱走した二人が、彼女と共に現れた。
タイラーは眉間にシワを寄せて睨み付けている…。
「そっちから戻ってくるとはな」
皮肉に笑いながらそう吐き捨ててやると、タイラーが近付いて来ようとするの銃で制止した。
銃を向けたまま、仲間の声で再び馬車の方を見やると、彼女が俺を説得しようとする。
「止めよう?こんな事して、何になるの」
「…言っただろう、彼奴らを皆殺しにしてやる」
彼女の方を見ずに低く言い放つと、彼女は銃を向けられているにも関わらず、近付いてきて鈍い音が木霊した。
俺も皆も、一瞬何が起こったのか分からなかった。しかし次第にヒリヒリ痛みだす頬に,叩かれたのだと気付いた。
思いきり彼女の方を睨みつけると、彼女も俺を睨む。彼女の表情を見て言葉を失い、固まってしまう。
泣いている…彼女は泣いている。
「あの子はこんな事望んでない」
呟いた言葉は久しく聞く、彼女の名前。愛していた、大切だった彼女。
「自分を責めないで」
嗚呼…同じだ、彼女と…同じだ…
彼女も、シーアもまた今の彼女の様に泣いていて、俺に"責めるな"と言った。自分を戒めるなと…
彼女の言う通り、シーアは帰ってこない。
どんなに想っても、どんなに願っても、もうーー…彼女は帰ってこない…
やめる、べきなのか…?
一瞬揺らいだ考えは、仲間の声で我に返る…再び馬車に視線を向けて、間近まで接近していて、攻めるなら今が好機だった。
それ以降、彼女の方を一切見ずに当初の予定通りに計画開始の合図をする…
「シャル…!まだ間に合う!!」
タイラー…もう後戻りはできないんだ。
そして俺は、復讐と言う名の、計画に掛かったのだった。
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