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何を言っても、聞き入れない態度に諦め、城へ戻る替わり、俺たちに危害を加えない事を条件にした。
そうして馬車に乗る手前で立ち止まり俺の方を向いた。
「騙してごめんなさい、でも分かって…国民のためだったんです!」
彼女は悲しげにしかし志を貫こうとした、俺としては欺かれて、そんな事を言われても怒りが湧くだけで…
彼女の言葉を無言で聞いていると、少しの間共に行動できて楽しかったと述べた。
帰るわけには行かないと拒否していたのに、俺たちの身を案じ城へ戻ろうとしている。
彼女には式を延期させた理由がある、それが何なのか、知りたかった。
「逃げるのか」
そう呟くと、彼女は驚いてこちらを振り向き、その場は静まり返る…。
導かれるように口をついて出た言葉は、彼女にとってはどう取れたのだろう。
彼女にやらなければならない事があるのだとしたら、今城へ戻っても民衆の信頼をも無くすだけだ。
彼女も何かを悟り隙を突いて腕を逃れ、俺のもとへ走りそのまま彼女の手を引いて逃走する。
逃げる最中、シャルのために仲間が足止めをしてくれたことで敵の追っ手は来ず、退くことができた。
古屋敷に身を寄せていた俺たちだが、静まったところで再びシャルに銃を向けられる。
俺とシャルは見詰め合う形で、お互いを睨み付けている。
暫く緊迫した空気が流れたが、唐突に銃を下ろし床に落下した。
そして壁に寄りかかり、そのまま滑り落ち頭を抱え崩れるシャル。
「俺は…また…」
悲痛で静かな声に、かける言葉が見つからない。彼の心は傷つき、無駄に命を散らせた…。
「お前らが来なければっ!……」
彼の言葉が途切れたのは、再びタイラーさんに頬を叩かれたからである。
彼女は怒りに表情が歪み、涙を流していた。
「いい加減にして!!分からないの?!」
彼女の怒鳴り声は屋敷中に響き渡り、皆呆然としていた。
彼女は更に何かを言おうとしていたが、口を紡ぎ言葉を呑み込んだ。
そして俺たちの方を振り向き、外へ出るのは危険だからと泊まって行く事を提案された。
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