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深夜、俺は夢に魘されて起きた。時刻は深夜2時…身体中汗だくで、少し風に当たってこようとシリウスを起こさぬよう屋上へ来た。
夜風は汗で濡れた額や頬を撫でていき、髪は冷たい風に揺られている…。
暫く屋上で体を風に浸していると、突如激しい痛みに襲われ膝を着く…
冷え始めていた体は、体内の熱で再び汗をかきはじめる。
熱い…まるで俺の体から、何かが出たがっているようだ。支配されるような激しい痛みに耐えながら、治まる気配はない。
その時横で、引き金を引く音が聞こえて少し上を向いて横を見ると、シャルが銃を向けて立っていた。
しかし撃つわけでもなく、ただじっとこちらを見下ろしているだけだ。
撃たないのかと聞くと、僅かに肩を揺らし迷いを感じているようだった。
「…殺したところで、変わりはしない」
そう呟いて銃をしまい屋上の鉄格子に腕を乗せ寄りかかる。
ようやく痛みがひいてきて、立ち上がると彼の隣までいき俺も肘を乗せて寄りかかった。
暫く無言のまま時だけが過ぎていく…そして唐突にシャルが口を開いた。
「…あの時、なんで助けた」
静かな声音で夜空を見上げるシャルは、俺の方を見ずに問い掛ける。
自分達だけでも、十分逃げれたはずだった。そうしなかったのは…
「逃げ出したくなかった」
そう呟くと、シャルが疑問を抱いた表情でこちらを見ているのが分かる。
ただもう…誰の血も流したくはなかった、多くの、血を流してしまったが…自分が憎い、守れなかった己の弱さを恥じる。
フィナの事も…結局守れなくて、傷を負わせてしまったんだ。
本当は俺だって、彼女の側にいたかった、守りたかった。彼女が好きだった…
「俺も、大切なものを傷つけた」
そう、シャルが悩んでいるように、俺も悩み続けていた。あの時のフィナの表情は今も忘れられない。
酷く、傷ついた顔…涙腺が緩くなり目の下が腫れていた…。
あの時、自分の身に何が起こったのか俺は知らない。ただ今のように身体中が熱くなる感覚だけは覚えている。
「…認めたくはないが、俺と同じか…」
シャルはぽつりとそう呟き、肘をついていた体勢から姿勢を戻し、俺の方を見た。
…復讐に塗れた瞳はどこか迷いを感じさせ、同時に悲しみを漂わせる彼の姿は感情を無くしたように俺を見るのだ。
「…なぁ」
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