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数日後、タイラーさんたちに世話になった礼を言い、古屋敷を出ようとすると呼び止められた。
タイラーさんが、一緒に連れていってほしいと言って、既に荷物を整え俺たちと来るつもりのようだった。
しかし彼女を呼び止める声が、彼女の背後から聞こえた。
「お前に抜けられたら困る」
相手はシャルで、彼女に留まるように言っているが彼女の方は決心が固まっていて、聞き入れなかった。
「ここには居られない」
なぜ彼女がここを去るのか理解できないシャルは、潜めていた眉を更に寄せた。
「…ここに居たら、気持ちを押し付けてしまう」
だから去るのだと言う彼女の言葉が、何を意味しているか理解できず、首を傾げる。
「…愛してるわシャル」
唐突に彼女の口から出た告白に、動揺しているようだ。
自分のためにも選んだ答えだったのだろう、今二人の間に口を挟むことは許されない。
シャルも彼女の告白を聞いて悟ったようで、何も言えずにいる。
少しの間、重々しい沈黙が屋敷中を覆い、息遣いだけが聞こえる。
「タイラ…「さよなら」
まるでその先を言わせまいとでも言うように、別れの言葉を告げ、振り返らずに外へ出ていってしまった。
暫し伏せていた目が俺を捕らえ、力強く訴えている…俺も目で返事を返し、無言のまま、古屋敷を出ながらあの時の事を思い出していた。
ーーー
ーー
「…約束?」
彼女は自分の側から離れて俺たちと共に来るかもしれない。だから、その時は仲間である彼女を守ってほしいと頼まれていた。
「…いいのか、俺なんかを信用して」
「信用しちゃいない。がお前しかいないんだよ」
"頼むな"
ーーー
ーー…
…必ず彼女を守る。
約束する…。
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